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【イケメン戦国】夢心地の宵

第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》 





そこから少し遡ること四半刻前ーーーーーー



「まぁっ、そんな格好をして。はしたないですよ姫様」


自室にて。
足を崩してだらだらと下らない娯楽書を読みふけっていると、席を外していた侍女が再びやってきてさっそく説教を垂れた。

一瞬そちらに視線をやったが、すぐに書物へと戻す。


「うるっさいわねー、誰も見てないんだからいいでしょう。
こうやって息抜きでもしないと姫なんてやってらんないわよ」

「たまの息抜きも怠惰も大いに結構でございます。ですが今は姫様の人生にとって大事な時期。
あの御方の心を掴む為にもっと有意義な行動をなさってはいかがですか」

「あの男に何を仕掛けたって無駄よ。私の魅力が分からないなんて変人もいいとこ。破談になって構わないわ」

「何をおっしゃいますか。私は確信しているのですよ、あの御方こそ姫様を幸せに導いてくださると」

「どういう根拠でそう言ってるのか知らないけれど…やたら押しの強いこと。
あなたそういえば昔、光秀様と関わりがあったわよね。まさか今回の縁談を裏で根回ししたのは…」

「…さぁ…身に覚えはありませんね。
そんな事よりも姫様、これをどうぞ」


その単調な抑揚の返答は真か、否か。
僅かたりとも表情を崩さず話に区切りをつけた侍女は、小脇に携えていた包みをさっと差し出してきた。

結び目を緩ませ中身を覗いてみると、不均等に整えられたおにぎりが二つ。蕪の漬物も添えられている。


「空腹のままだと苛々は収まりませんよ。行動する前にまずは腹ごしらえから。
朝餉は喉を通らずとも馴染みのこれならお口に合うはず。姫様の好きなばあやのおにぎりですよ」

「……」


気晴らしに外で食べていらっしゃいーーー
そう侍女に背中を押された私はぶつぶつと文句をこぼしながらも、渡された包みを持って部屋を出た。














「なーんか釈然としないわねぇ。食べ物で誤魔化そうとするなんてばあやったら…私はもう子どもじゃないのよ」


安土城・庭園。
草っぱらへ大の字に寝転んだ私は、青空を眺めながら一口、また一口とおにぎりを頬張る。
ふん、悔しいけど塩加減が絶妙ね。
幼少の頃から食べ続けてきた味は、血が上って熱くなった頭をだんだんと冷めさせていくから不思議だ。


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