第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
ーーー翌朝。
宴が遅くまで続いた為城で寝泊まりしたらしい武将達と共に朝餉の席に着く。
今日はどうやって好感を得ようかしら?
情報によると信長様は囲碁が得意のようで、同じく腕に覚えがある私が相手になればきっと楽しんでくれるはず。
でも政務で忙しいかもしれない…
そうだ、合間にさり気なくお茶を持っていって健気な一面を見せるのも良いわね。
なんだったらお務めの手伝いだってできるわ、私のこの知性があれば。
さて、まずはこれからの予定を聞かなきゃ。
「ところで信長様、本日は…」
食事中一旦箸を休め、問い掛けようとしたのだが。
当の信長様はまたもや舞や他の者達と話していて私の方を見向きもしない。
昨夜だけではなく今朝もこれ?
……変だわ。
朝餉も終わり程なくしてお茶を片手に訪ねたが「そこに置いておけ」と一言だけで、
その半刻後生けた花を届けようとするも
舞を連れて趣味の鷹狩へ出掛けたらしく彼の自室はもぬけの殻だった。
一緒に囲碁を楽しむどころか会話すらままならないなんて…
やっぱり変だわ。明らかにおかしいわよ。
そんな未だかつてない仕打ちが次の日もまた次の日もそのまた次の日も続き、痺れを切らした私はーーー
ついに最終手段に打って出た。
「…貴様、ここで何をしている?」
「見ての通り。
信長様の寝床を温めているのです」
ある晩、天主の閨にて。
襦袢姿の私は、褥に横たわったまま信長様を待ち構えていた。
こんなに早く切り札を使うとは予定外だけれど、手強い相手を落とす為には仕方がないわ。
女の武器は美貌と身体。
ましてや私のような極上の女がこの身を差し出しているのよ?喉から手が出るほど欲しいに決まってる。
「さぁ信長様、こちらへ」
「……」
「あなたの奥となる女がどんな味なのか…どうぞ堪能して下さいまし。じっくりと…」
はだけた布地から胸元や脚を晒し、佇んだままの信長様を悩ましげな表情で見つめてみる。
どう?もう我慢できないでしょう?
この漂う色香に負けて私を求めてくる、そう信じて疑わなかった。
…のに。
「肌を仕舞って部屋へ戻れ。
ーーーじきにここへ舞がやって来る」