第2章 天下人の女 〜高飛車姫〜 【織田信長】 《R18》
ーーーそれから、程なくして。
信長様の忠臣である豊臣秀吉様が取り仕切っているという恒例の茶会が催されることになり……
自室として宛てがわれた部屋にて、侍女を引き連れた私は意気揚々と化粧直しに励んでいた。
「紅はこちらの淡い朱色にしましょうかね、姫様。控えめで可憐に見えますよ」
「あら分かってるじゃない。さすがね、ばあや」
「ふふ、ご機嫌ですねぇ。
あの幼かった姫様がもうすぐ祝言なんて…嬉しくてたまりませんわ」
古くから仕えてきた侍女は感慨深くそう目尻に皺を刻み、私の唇に紅を塗る。
ーーーそうよ、いよいよ時が来たの。
祝言は女の晴れ舞台。
一月後、粛々と完璧に成し遂げるにはまずこの滞在中上手く立ち回らなければ。
まぁ心配は無用だけれど。
「茶会が開かれるなんて好都合ね。私の教養の高さをこれでもかとひけらかしてやれるもの。
皆の反応が楽しみだわ」
幼少から培ってきたありとあらゆる術をここぞとばかりに発揮してやるわ。
腕の見せ所よ!
ーーー安土城・庭園にて。
柔らかなそよ風と暖かい日差しが心地良い昼下がり。
澄みきった青空のもと、盛大な茶会が行われ……
信長様をはじめ、有力な大名や武将達がずらりと顔を揃えていて圧倒的な威厳を醸し出してはいるものの、厳かというよりは和やかな雰囲気がその場に漂っていた。
「ん、美味しい〜。
お菓子も作れるんだね政宗。すごーい」
用意された菓子を静かに口に運んでいる時。
少し離れたところから、俗っぽい話し声が聞こえてきて。
姿勢は乱さず、目玉だけを動かしそちらへ視線をやってみると……
奥州の地を治める武将・伊達政宗様となにやら親しげに会話している、ひとりの女の姿を捉えた。
あれは確か、
“舞”とかいう織田家所縁の姫ーーー