第4章 雪上の氷壁 【上杉謙信】
「さ…猿飛様も器空いてますね。もう一杯いかがですか?」
「気にしなくて大丈夫。茅乃さんもそろそろ腰を落ち着かせて宴を楽しもう」
「はい…。あ、そういえば貸して頂いた書物なのですがとても興味深かったです」
「なら良かった。暇つぶしには最適だと思ったんだ。今度また他のを貸すよ」
「嬉しいです、ありがとうございます。
──真田様もこの間また差し入れをして下さいましたね。ありが…」
佐助、そして幸村へそれぞれに礼をと頭を下げるも、当の本人は手をひらひらと振って話を遮り…
「礼はもう要らねー。
それよりもお前、花札できるか?」
「え?まあ…一応は…」
「よっしゃ。じゃあ皆でやろーぜ。負けた奴は団子奢りな」
座布団の上に札をばら撒く幸村の背後で、ぬっと信玄が顔を出す。
「なに?団子?それは負ける訳にはいかんな」
「信玄様には絶対勝たせねーから覚悟しといて下さいね。おら、佐助も掛かってきやがれ」
「もちろん参戦するよ、カードゲームは得意だからね」
激しく闘志を燃やす面子に圧倒されたのか、くるりとこちらを振り返った茅乃は援護してほしいと言わんばかりに目で訴えかけてきた。
…賭けの対象が団子とはいまいち釈然としないが、仕方あるまい。
「どれ、手札を見せろ茅乃。策を弄してこやつらを叩き伏せてやろう」
他愛もない遊びに興じながら、酒を呑み、食に舌鼓を打ち。
冬の寒さも忘れてしまうような熱気溢れる宴は大いに賑わった───。