第3章 終業式の後に(芥川/跡部)
プール上がりにドライヤーで乾かしただけのポワポワな髪は、しっとりとまとまり、仄かな香りをまとっていた。
めいこ「あ、ありがとうございました」
跡部はブラシを置くとめいこのサイドの髪を掴み、そのまま毛先へツツツっと手を滑らせる。
ちょうど鎖骨から下をなぞられた形にもなり、体がゾクゾクとした。
めいこ「っふ」
思わず出てしまった力の抜けた甘い声に、跡部の動きがピタリと止まる。
うっかり変な声を出してしまっためいこは、顔を真っ赤にして変な汗をかいていた。
何今のどうしよう恥ずかしいヤバイヤバイスルーして欲しい恥ずい!
めいこ「...ふぅ、クシャミ止まっちゃった」
口元に手を当てて苦し紛れの誤魔化しをしたが、跡部には通用しない。
ニタリと笑いながら今度は鎖骨下を親指で強く押してきた。
めいこ「ふわっ!」
思わず身をよじってしまう。
跡部「なるほど?ココも弱いってわけね」
めいこ「うーっ!うーっ!」
また抗議のような唸り声しか出せないめいこであった。
めいこ「セクハラですセクハラ!もうぶちょーなんなんですか今日!」
鎖骨を隠して慌てて立ち上がり、その場から逃げようとしたが椅子が動かない。跡部がしっかり後ろで抑えているのであった。
キッ!と振り返ればとても楽しそうな顔があった。
めいこ「ぶちょおおおおお!」
跡部「今は部活中じゃない。跡部先輩、だろ」
めいこ「どっちでもいーじゃん!ふぬぬぬぬ!」
めいこ渾身の力で椅子を動かしてもビクともしない。
めいこ「クッ!さすがテニス筋!」
跡部「お前がヒョロヒョロなだけだろ」
めいこ「もー!何でそんなあたしのことからかうんですかぁああ!」
今度は跡部の手首を掴んで引っ張ってみたが、やはりビクともしない。
跡部「何でって...それはお前...」
【ゲッ、お母様から電話だわ....ゲッ、お母様から電話だわ】
めいこ「あ、電話!」
突然謎の着信音が鳴り、跡部はパッと後ろに下がってそのままソファに腰掛けた。
めいこはそこに置いてあった自分のバックから携帯を取り出す。