第3章 終業式の後に(芥川/跡部)
横の跡部はスマホで誰かに電話をかけた。
跡部「あぁ、俺だ、もう直ぐつく」
短くそう言うと、すぐに切ってしまった。
跡部「和栗、裏口から出るぞ」
めいこ「へ?」
階段後ろの小さいドアを開けると、お決まりと言うべきか、黒いリムジンが止まっていた。
めいこ「は?」
呆気にとられるめいこをよそに、執事と思われる初老が「お帰りなさいませ」と、素早くドアを開けた。
跡部は芥川を先に預けると車に乗り込んだ。
めいこ「いいなぁ。ぶちょー、よい夏休みをー」
自分の生活とは運例の差に愕然としながら、めいこは力なく手を降った。
跡部「お前も乗んだよ」
めいこ「何で?!」
イキナリ右腕をぐいっと掴まれ、バランスを崩しためいこは跡部の太もも辺りに顔面ダイブした。
めいこ「ウブッ!」
跡部「何て声出してんだよ、ホラもう少し詰めろ」
その体制のまま胴体を掴まれ、右に移動させられる。
後ろで「失礼します」と声がしたかと思うと、執事が目の前を通過して、車体の右側にある長いベンチのような椅子に、芥川を寝かせて去っていった。
それでも芥川は起きない。
めいこは不可抗力でなった跡部の膝枕からのそのそと起きると、キョロキョロ辺りを見回した。
跡部は肘をつきながらめいこの頭をなでているが本人はそれどころではなかった。
めいこ「なんじゃこりゃー」
長椅子の向かい、左半分はシャンパンやテレビなどが置かれている。
前の方から「では、出発いたします」と声がした。
めいこ「えっと、なんであたしが...?」
跡部「あんな暑い中帰ったら倒れちまうだろ」
めいこ「でも鍵返してないし...」
跡部「それはもう職員室に連絡済みだ。スペアーがあるからまたの時でいいとよ」
めいこ「ありがとうございます...でも、あの、帰りにこのずぶ濡れ制服をですね、芥川先輩んとこのクリーニング屋さんに出そうって話ててですね...」
跡部「俺様のところで洗ってやるから安心しろ」
めいこ「へぇ、ありがとうございます...あ、あと...」
跡部「いいから乗ってろ」
ぶちょーは執事さんもいるんですか?