第3章 終業式の後に(芥川/跡部)
跡部「風邪引くだろーが。あいつはまだ当分先だ」
めいこ「...はーい」
そう言われると素直に従ってしまう。
なるほど。皆こういうのにハマっていくワケね、と妙に納得する。
跡部は背を向けためいこにポツリと言った。
跡部「濡れた髪も色っぽいけどな」
めいこ「1言多いです!!」
恥ずかしさに早足で更衣室に戻ると、背後で笑うのをこらえている気配がした。
化粧室の椅子に座り、ドライヤーで髪を乾かす。
ここは学校だというのに、綺麗なスーパー銭湯のような化粧台がいくつか設けられていた。
鏡に写った自分をぼーっと眺めながら、無意識のうちにテニス部や跡部のことを考えていた。
1年の頃は他の部に入ってたんだけど、2年のときにゆゆかに誘われて入ったんだっけ。
一緒にマネージャーって何だか楽しそうってくらいだったんだけど、なんか、思ってたよりずっと大変で、ずっとずっと楽しかった。
跡部様とか言われて、ちょっと遠巻きに見てたぶちょーさんとも、あの大雨がキッカケで最近よく話すようになった。
友達に、なれたかな。友達だって、思ってくれてるかな。
たまにからかってくるけど。
跡部「おい、ニヤニヤしてねーでそろそろ行くぞ」
めいこ「っわーー!」
背後には爆睡した芥川を背負った跡部がいた。
レギュラージャージに着替えて力尽きたらしい。
めいこ「ビッ!!超ビックリした!気配消して立つのヤメテ!」
跡部「お前がボケっとしてただけだろ」
めいこ「てかここ女子更衣室だし!」
跡部「お前1人が髪乾かしてるだけじゃねーの」
めいこ「そうですけどぉおお...というかこれ、レアですね」
跡部「あん?」
めいこ「ぶちょーが芥川先輩背負ってるとか...」
跡部「あぁ、今日は樺地がいねーからな」
いつの間にか乾いていためいこの髪は、ホワホワとしている。
これは後でオイルを塗らねば...
跡部「バサバサだな」
めいこ「インサイト?!」
跡部「何でだよ。まぁいい、後でやってやる」
めいこ「何を?!」
めいこの返答には答えず、階段を降りていった。
プールの鍵を返す為に、また教室棟へと向かわねばならない。
いくら速乾性の体操着に着替えたからって、またあの暑い中を歩くと思うと億劫だ。