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【銀魂】化けやかし

第1章 はじまり


「? まだ起きていたのですか?」

『…はい』

「古い辞典を広げて…調べ事でも?」

『何だか眠れないので、気休めに』





夜も深くなった頃、小さな蝋燭の灯りが見えたのか先生が部屋にやっ来た。


統一感のある四角い文字がたくさん並ぶ分厚い文庫は古びて草臥れていた。
紙は変色し、茶色っぽくなっているが、古い本の匂いは嫌いじゃない。
水分がなくなった紙は乾いた音を鳴らしていたが、1ページ、順に捲る。



「珍しいですね、が〈妖辞典〉なんて」

『…そうですか…?』

「そうですねー…好きではなさそうに見えます」

『好き、ではないです』




先生は「やっぱり」と当たったことに対して小さく笑って喜ぶ。
自然な流れで私の隣に座り、一緒に本の中へ目を向けるその横顔は意外にも真剣だった。




『先生、』
『妖怪は悪いものですか?』


「悪いものもいれば」
「良いものもいますよ」



今度は真っ直ぐ私の方を向いて優しく笑う先生の顔はとても暖かくて、硝子物を扱うようだった。




『...妖なんて、全部悪いものだと思ってました』

「おや、過去形なんですね」

『今日、...ちょっと変わった妖に会いました』

「それは良い出会いでしたか?」

『それはどうでしょう...』



良い出会い、と言って良いのだろうか。
いや、助けては貰ったが出会いとしては最悪だったかもしれない。



「誰と会ったんですか?」

『九尾の...銀時』

「それはまた珍しいのに会えましたね!」

『...珍しいんですか?』

「あれでも上級妖怪ですからね」




簡単には会えませんよ、良かったですね。


良かったのだろうか? 少なくとも『良かった』とは言い切れない。
それでも先生は「そうですか、銀時が」と嬉しそうにしているから何も言わなかった。


そう言えば、銀時は先生の事を知ってた。
確かにこんな離れに神社が一つあれば知っていても可笑しくはないが、先生も銀時を認知しているとは。




「お供物のお稲荷さん」

『え?』

「何時も無くなってるでしょう?」

『...はい』

「あれは銀時が食べに来てるんですよ」





クスクス、そんな風に笑うもんだから冗談か本気か分かったもんではない。
きっと本当なのだろう、視える私はそれを信じれる。
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