第3章 正体
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小さな町で生まれた女の子の瞳は真っ赤だった。
女の子の母親はそれを見て顔を強ばらせた。
"朱目"の女の子は周りとは違った。
見えないはずのものが視えてしまった。
『なにしてるの?』
「またよ、また"何か"に話しかけてる」
普通の人には其れ等は見えなくて、女の子は気味悪がられた。
小さいながらに大人達から浴びせられた罵倒の数は数え切れないだろう。
母親は守ってくれない、それどころかその大人の中には母親も含まれていた。
ついには町から追い出された。
町の災厄は全て女の子のせいにされ、"鬼"やら"呪われた子"やら散々言われた。
『痛い...』
殴られた体も、心も、ボロボロだった。
命からがら...そんな言葉がピッタリだろう、女の子は山の中へと逃げた。
「おい____」
そんな女の子を救ったのは1人の妖。
ボロボロの女の子を抱き抱え町の人間から身を隠した。
ある程度の体の傷を治療して知り合いの人間へ預ける事にした。
まるで女の子に「その人間がお前を助けた」とでもするように。
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「お前の血は」
「妖達の力の源になる」
「だから皆欲しがる」
ドクドクと鼓動が波打つ。
「その妖は」
「その内お前の血を欲してしまう、と」
「自らお前と距離を置いた」
これ以上、聞いてはいけない。
でも声が出ない。
「それが、お前もよく知る」
「"九尾の狐"だ」
もう後戻りは出来ない。
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