第3章 正体
結局、鎌鼬の件は双方穏便に事は終わったのだが。
より一層深まる町の人間と私の闇。
『私が、何をしたって言うの』
小さく零した愚痴は誰にも届くことはない、と思っていたのに。
「何だァ? 今日は敬語じゃねぇんだな」
振り向けばそこには晋助が居た。
人間の姿に化けている晋助は着物の袖に手を隠すように腕を組んむ。
『晋助は、知って居ますか?』
私が何者なのか。
「…嗚呼、知ってるぜ?」
「俺は長生きだ、此処らの妖のことも、人間のことも」
「何でも知ってる」
なら、教えて。
私の目のこと。
「長い話になる」
晋助はそう言って、己のテリトリーである池まで歩き出した。
蛟である晋助は綺麗な水を好み、長時間人間の姿でいることは滅多にないそうだ。
池の畔りに着くまでの間、不安に押し潰されてしまいそうで、胸の辺りをグッと掴んで堪えた。
『(知りたいけど、知りたくない)』
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