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【ヒロアカ】華恋【轟焦凍】

第2章 夏恋[R18]



あの夜から数日後。
彼氏の連絡先はその日の内に着信拒否して
アドレス帳から消した。
あれだけ苦しかった胸の痛みは
もうどこにも見当たらない。

その代わり
財布の中にあるメモを見る度に
胸がざわついて
それでもそのメモを捨てる気にはなれなくて
行き場のない気持ちを持て余していた。

そんな時に気分転換をしようと
会社の同僚に誘われて海へとやってきた。


「うひゃー人多いねー!」
「まぁ、夏真っ盛りだからねぇ」


同僚と共に先ずは海に入ろうと
波打ち際に向かっている時。


「?」
「…なんで、こんなところに…」


目の前には数日前に連絡先を削除した
浮気した彼氏とその友達数人の姿。


「なんでって、休み使って地元に帰ってきたんだよ。帰るから連絡しようとしても繋がらねーし」


まさか、着信拒否に気付いていない?
私があの日見知らぬ女と鉢合わせたのを
聞いていないのか。
それならば、今はっきりと伝えよう。


「…別れよ」
「は?いきなりどした?」
「もうこれ以上あんたと付き合えない」
「っんだよ、それ」
「何お前、彼女に愛想つかされてんの?」
「るせぇ!お前ら先行ってろ!」


その一言で数人の友達はその場を後にした。
同僚にも悪いと思って先に行ってもらうことに。
二人きりになったところで
私の気持ちが変わるわけでもないけど。


「で、別れるってどう言うことだよ」
「そのままの意味」
「わけわかんねぇ」
「浮気、してたよね?」
「何…言って」
「記念日の日、会いに行ったんだよ。そしたらあんたの服着た女が出てきた」


途端に狼狽え出すのを見て
やっぱり浮気していたのかと確信する。
それでもあれは違うだの、別れる気はないだの
言い続けられることに嫌気がさしてきた頃。


「と、取り敢えず。移動するぞ!」


腕を掴まれどこかへ連れて行かれそうになり
反射的に腕を引くけど
男の力に敵うはずもなくて


「離してっ。あんたとこれ以上話すことはないっ!」
「俺はあるんだよ!いいからついてこい!」


周りには他にも海水浴客がいて
私達の様子を遠巻きに見ている。
それでもついて行きたくなくて
必死に抵抗していた、その時。


「その手、今すぐ離せ」


もう聞くことはないと思っていた低音が
再び私の鼓膜を揺らした。


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