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innocence

第5章 蒼の目覚め


後日、俺はなけなしの空きコマを利用し、ワームについて徹底的に調べ上げた。
医療系の大学ということもあり、生物学の蔵書はかなりの数が揃っている。が、載っているのは寄生虫やペットの餌のことばかりで、探している未確認生物の情報はすずめの涙ほどもない。
クロックアップについても、ウェブ上やホームページで目ぼしい情報は見つからなかった。
「作り話ではないはずだが……。存在が秘匿されているのか?」
半ば諦めかけていると、関連語句の中に興味深いリンク先を見つけた。

__________1999年、渋谷に突如として降り注ぎ、街と人々に甚大な被害を及ぼした、通称「渋谷隕石」。
その隕石と共に、無数の地球外生命体が飛来し、人間を殺しては擬態し、猛威を振るった。
それらは勇猛なる「蟲の戦士達」によってほとんどが滅ぽされたが、ただ一体、戦いを知らない女王のみがいまだにこの世をさまよっている。

……以上の内容が、渋谷隕石を生き延びたとある学者の日記に記されていた。

「その地球外生命体こそがワームだとしたら……」
「お、鏡〜」
意識外から肩を叩かれ、心臓が大きく跳ねる。
振り返ると、秋人がヘラヘラ笑いながら手を振っていた。
「何だお前か……。心臓に悪い」
「ひっど!?ごめんって!それより、昼飯食いに行こうぜ。混まないうちにさ」
腕時計を見ると、2限終了まで残り10分を切っていた。
「そのことだが、今日の昼食は親父ととることになっている」
「親父さん……ああ、病院長か。何だかんだ言って親子仲いいよなお前ん家」
余計なお世話だ、とウインドウを閉じようとすると、秋人が引き止めてきた。
「……あ。いいよ、俺片付けとくから。お前先に親父さんとこ言ってきな。急患でも入ったら予定がパァになっちまうだろ?」
「秋人……。すまない、任せた」
椅子にかけてあったジャケットを羽織り、集合場所に向け足早に歩く。
だが、俺はまるで気づかなかった。
秋人が神妙な面持ちで日記の画面を見つめていたのを。
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