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innocence

第5章 蒼の目覚め


その頃、郷未は怪物の頭部を太ももで挟み込んだままバク宙をし、敵を頭から地面に叩きつけていた。
『キメワザ!ドラゴナイトクリティカルストライク!!』
右足にエネルギーを纏わせ、天高く飛び上がる。
怪物は首があらぬ方向へ捻じ曲がっており、得意の高速移動で避けることもできない。
「はああああああああああっ!!」
必殺の飛び蹴りが怪物にめり込むのと、郷未が射程外まで飛び退くのは、ほとんど同時だった。

怪物は爆破四散し、街には再び平穏が戻った。
ただし、一つ引っかかることがある。
これだけ騒ぎ立て、終いには爆発を起こしたにもかかわらず、周辺住民はまったく異変に気付いていない点だ。

「……私のクロックアップの範囲が広いせいね。あなたを含む一定の空間が切り取られ、超加速した時間に移動した。だからこの世界には戦いの影響が出なかったのかも」
郷未が冷めた声でぽつりと呟く。
「あと、あの化け物はバグスターじゃない。ワームという地球外生命体よ」
クロックアップやらワームやら、説明もなしに意味不明な単語が飛び交い、脳が混乱する。
……郷未はある意味結界のような力が使える、それだけは理解できた。

「それより聞きたいことがある。お前は誰だ……ルリか?
そもそも、今の力はいったい________」
質問の途中で郷未は突然意識を失った。
背中から倒れたところに手を差し入れ、何とか支える。
「あれ……飛彩さん?」
次に目を覚ました時、もうあの異様な『彼女』は消え、元の雛月郷未が戻ってきていた。
「ねえ、あの変な怪獣みたいなのは……?」
「……心配するな。俺が倒した」
その言葉を聞き、郷未は安心したのか頬を緩ませた。それが、初めて見た笑顔だった。
特殊な事情があったとはいえ、郷未が笑えるようになったことは素直に嬉しい。

……ワームとクロックアップのことは後で調べよう。下手に問い詰めて郷未が壊れるくらいなら、いっそ隠したままでいい。
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