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innocence

第5章 蒼の目覚め


傷口を押さえ、激痛に顔を歪めていた郷未が、突然能面めいた無表情になる。
そして、まばたきの後、数秒置いて両目が深い青に輝いた。
出方をうかがっていた怪物が、目視しきれぬスピードで郷未に摑みかかる。
しかし、無力なはずの郷未はそれを物ともせず、横っ飛びでかわしてみせた。
さらに、その勢いのまま身体をひねり、怪物の鳩尾に重い拳を叩き込む。衝撃で怪物の背中が盛り上がった。
奴の全身は硬い甲皮で覆われているため、ひ弱な郷未の拳では傷つけようもないはずだが、怪物は呻き声をあげ、2歩3歩と後ずさった。
「……効いている、のか……?」
何より、あの目も覚めるほど澄んだ青い瞳を俺は知っている。
あれは___________ルリのものだ。
では、いったいどうやって幻想世界から出てきた?郷未に憑依でもしたのか?

俺が思索を重ねているうちに、郷未は身軽な体捌きで高く跳ね、怪物から距離をとる。
……不意に、彼女の手の甲側から妙な音が聞こえてきた。見れば、郷未の手の皮膚が盛り上がったり突っ張ったりしながら、深い傷を痕すら残さず癒していた。
「ちょっと……見ないでよ」
郷未が横目で俺を睨むと同時に、怪物がまた姿を消す。
だが、郷未は敵の動きを完全に見切り、同様に姿が見えなくなるほどの速さで動き回る。
まるで、彼女達だけ別の時間軸にいるようだった。

「っお前、ボサッとするな!戦え!!」
体感時間5秒ほどでいきなり郷未が現れ、俺に吠えた。
その一喝でようやく目が覚め、すぐさま中断していたレベルアップを再開する。
「術式レベル5」
『ガッチャーン!レベルアップ!タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!!』
レバーを開き、新たなゲームが起動する。
『アガッチャ!ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナ〜イト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!Z!!』
音声案内のやかましさが以前の比ではないが、いちいち気にしていられない。
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