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innocence

第4章 雛月郷未


4限終わり、何かと講義や実習で会う男が話しかけてきた。
秋人とかいうその男は、昼のひと騒動を見ていたらしい。
附属高出身で、郷未の人となりや家庭環境をある程度知っているとのことで、いくつか情報提供をしてくれた。
まず、郷未は遅刻とサボりの常習犯であること。授業中なはずの時間にカフェにいたのはそのためだ。
次に、母親が新興宗教にはまり、郷未も巻き込まれているということ。競争は有害だとして体育に参加できず、国歌も敵視されているので歌えない。
つまり全校集会では座っているか、そもそも参加しない、となる。
食事にも厳しい戒律があるようで、母親は家事をしていないらしい。昼食代は渡されないが、郷未は自炊ができない。

_________となると、菓子の山はせめてもの抵抗というわけか。

「鏡さ、何でそんな雛月ちゃんのこと探るわけ?もしかして好きとか?」
秋人が茶々を入れてくるが、否定はできない。
『拝嶋郷未』の頃から薄々感じていたが、小動物のような態度の奥に見え隠れする、どろりと濁った瞳。
あの狂気をはらんだ眼差しに、俺は無意識に惹きつけられていたのだ。

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