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innocence

第4章 雛月郷未


聖都大学附属高校は、その名の通り聖都大学の系列校である。
食堂・図書館・体育館・カフェなど大学との共有スペースがあり、学生と生徒が顔を合わせることも珍しくない。
……そういうわけで、内部進学者が非常に多い学校でもある。

さて、そんな聖都大学附属高校は、大学に次ぐ伝統校でもある。3年前には中学校が開校し、その翌年には大幅な増改築が為された。まるで美術館のような、俗世と離れた空気感を醸し出す廊下。
教室棟・特別教室棟・管理棟はそれぞれ架け橋で繋がっており、中庭にはウッドデッキが配置されている。コンクリートが打ちっ放しの壁も、光と風、色彩を取り入れることで、灰色の建物の中に非日常性を感じられるような造りになっている。
そんな芸術的な校舎のデザインを観賞するのはほどほどに、俺達は必要資材を次々と設置していった。
体育館では内科検診・歯科検診・眼科検診を、理科室では聴力検査を行うことになっている。

やがて、授業を終えた高校生達が整列状態でぞろぞろと入ってきた。大半の女子が俺を見るなり黄色い声を上げ、教師に注意されていた。人の顔を見て騒ぐとは失礼千万な奴らだ。
余談だが、生徒の診断結果は我々医学生が記録するため、この学校の保健委員は皆と同じ時間に診断を受けられる。そこが医療系学校の利点といったところか。

話を戻すが、列の中には郷未の姿もあった。しかし、俺の知る彼女とは随分様子が違う。
髪の毛は少し明るく、弱々しくて自信が感じられなかった丸い瞳は、野良猫のように挑戦的な目つきをしている。
「鏡君、知り合いでもいた?」
生徒達が教師から説明を受けている間、担当の内科医が話しかけてきた。
「……ええ、少し」
家同士の因縁で、とは言い出せなかった。
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