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innocence

第3章 白日夢


「ルリ……!」
磨き抜かれたリノリウムの床には、ぼんやりとルリの姿が映っていた。
いつか彼女が何かを通して話せると言っていたが、鏡かそれに準ずる物体のことを指すようだ。
「聞きたいことは山ほどあるって顔してるね。そう思って出て来ちゃった」
「……ああ。ゲーマドライバーとガシャットはどこだ?家の中をくまなく探したが、見つからなかった」
自分で言うのもなんだが、俺は警戒心がかなり強い。万一のことを考え、ゲーマドライバーとガシャットは寝る時まで肌身離さず身に付けている。虚構世界では手元にあったので、恐らく世界線移動時に紛失したのだろう。
「それね、私が預かってる。まだ必要ないから」
「まだ?ならバグスターは存在しているのか」
「うん。でも大した力はないし、人に危害を加えてもない。けど、ゆくゆくは暴れ出すだろうから、もしもの時は渡すよ」
「……そうか」
二つ隣の部屋から住人が出てきて、床を見つめたまま真剣な表情をしている俺に怪訝な視線を送ってきた。
「ほら、もう行きなって。変な人だと思われちゃうじゃない」
ルリがあきれた様子でこちらを見やる。その姿は陽炎のように段々とぼやけていく。

腕時計の針は8時25分を回っていた。ここから大学までは約15分の距離。十分に時間はあるが、事前説明や資材の準備もあるため、ルリの言う通り出発することにした。
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