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innocence

第3章 白日夢


「そもそもあなた、郷未みたいな人間が何で拝嶋家にいるのか、考えたことある?結構昔からいる一族なわけだけど」
「いや……ただ、良家の子女とは思えないような雰囲気を醸し出していたことはあったな」
バグスターはふん、と鼻を鳴らす。眉間に皺が寄っていないことから、答えとしては悪くなかったようだ。
「線としては悪くないけど、正直まだまだだね。だってそんなんじゃ郷未が何をしでかしたのか、彼女とはいったい何者なのかに辿り着けないでしょ」
バグスターの口ぶりから察するに、ゲーム種別としては推理・サスペンスものに振り分けられるだろう。……あくまで『ゲーム』としてなら。
大まかなシナリオ構成はされているが、実際の結末は飛彩自らが選び取っていく。仮想世界とはいえ、郷未の半生には違いないからだ。

「ところで、お前のことはどう呼べばいい?今まで名乗って来なかっただろう。呼び辛くてかなわん」
「名前ねー……。ゲームのキャラじゃないからアダ名みたいなものだけど、ルリとでも呼べばいいよ」
「ルリか。わかった、覚えておこう」
するとルリは俯き、飛彩にも聞こえないような声で何か呟いた。
同時に、どこかから錠前の開く音がした。
_________気がつけば、背後に木製のドアが出現していた。
中からは光が漏れ出ている。

「……少しの間お別れ。郷未のこと、頼んだからね」
「ああ。俺はもう逃げ出したりしない。許される限り、何度でもあいつと向き合う……約束だ」
手を振るルリに飛彩は手を挙げて応える。その後はもう決して振り返らず、異界へ通じるノブを回した。

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