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innocence

第3章 白日夢


目が醒めると、濃紺の大空に無数の星屑が散らばっていた。
磨き抜かれた鏡のごとく透き通った水面には、白や紫など色とりどりの花が咲き乱れている。
起き上がってみても、不思議と服や体は濡れていなかった。
首だけ動かすと、視線の先には地球によく似た星が闇にぽっかり浮かんでいる。
幻想的な光景ではあったが、天国と形容するにはあまりに空虚で、寂しい場所だった。
___彼方で星を見つめていた人影がこちらに気付く。鍔広帽子を押さえ、ゆるいレース調のワンピースを着た件の女だ。翻ったマントは、華奢な体躯に威厳を足そうとしているようにも見える。

「鏡……飛彩」
バグスターは飛彩のことをフルネームで呼んだ。どこか冷たさを帯びている美貌は、怒っているのか、泣く寸前なのか、よくわからない形に歪んでいる。
「待たせてすまない。……助けに来た」
「郷未を、よね。私は……あなた達の敵だから」
「敵じゃない。お前は郷未の半分なんだろう?俺はどちらも見捨てたりしない」
バグスターは飛彩言葉に目を見開く。
「……ほんと、わがままな英雄(ヒーロー)なんだから」
そう呟いた彼女の左目から滴がホロリと落ちた。強張った表情筋が少しずつ緩んでいき、やがて温かな笑みを咲かせた。
それだけで、飛彩は彼女を抱きしめたくなるほどの熱い衝動に駆られた。
だが、今はその時ではないと胸の高鳴りを押さえつけ、明らかに現実離れしたこの世界について、質問を投げかけていった。

「ところで、ここはどこだ?まさかあの時スイッチを押したせいで……」
「うん、死んでないよ。あなたは現実だとベッドに寝かされてる。
ここは『虚構世界』っていう場所で……タイトル画面からデモムービーの辺りと言えば分かるでしょ?」
「なるほど。お前を倒せば終了というわけではなさそうだな」
「そりゃそうよ。最終的にはあなたが決めることだけど。でも郷未のことはちゃんと見ててよね。でないと……あなた、本当に帰れなくなるわよ」
バグスターは横髪をかき上げた。
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