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innocence

第2章 きみがため


「……このゲームは俺が攻略する。そもそも嬢ちゃんを連れてきたのは俺だ。責任の一端はあるだろ」
「た、大我!それは強化用ガシャットじゃないんだよ!?取り合いなんかしてる場合じゃないって!」
「そうそう。それ幻夢製じゃないし、何が起きるか分かんないよ。大体さ、ニコちゃんに黙って行くのは悪ノリが過ぎるんじゃない?」
ポッピーピポパポと貴利矢の説得を受け、大我の脳裏に西馬ニコの顔が浮かんだ。
自分がゲームのために消え、何も知らないニコが当然のようにあの廃病院に顔を出す光景を想像すると、胃が痛んだ。

「無免許医の手を煩わせるまでもない」

凛とした一声がよどんだ空気を変えた。
決心がついたらしい飛彩は、すっくと立ち上がり、大我の目を見て告げる。
「小姫の再生の希望を捨てたわけではないが……俺は郷未を選ぶ。思えば、あいつは隣に立つというよりか、2・3歩引いて俺の背中を追いかけていた。
このガシャットにあいつの本心が隠されているなら、俺が踏み出すべきなんだろう。……もう鬼ごっこはノーサンキューだ」
大我は静かに飛彩の目を見つめ返した。その瞳には一点の曇りもない。
今まさに、飛彩が未来へ歩き出したことを確認すると、大我は満足げに笑みを浮かべ、オーバースローでガシャットを投げ渡した。
飛彩は片手で華麗にガシャットを受け、深呼吸をして心身統一を図った。

ガシャットの起動ボタンが押される。
馴染みの騒がしいアナウンスは鳴らない。
その代わりに閃光が走り、狭い部屋全体を夕日のように淡く色付いた光が包んだ。
たちまち飛彩の意識は霞んでいく。異次元に吸い込まれていく感覚がしたかと思えば、声を上げる間もなく世界が暗転した。
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