愛のカタチ~貴方と見る世界~【ONE PIECE】
第5章 気づき始めた想い
「迷惑かけてごめんなさい、船長さん…」
「気にするな。それと…その、”船長さん”っての、よせ。あと敬語も使わなくていい。ロー、でいい。」
ローは、棚にある服をいくつか広げながら言う。
「ロー、ね。わかった。じゃあ、ローもお前って言うのやめて。」
少し怒っているような口調で、抗議した。
「ほぉ…言うじゃねェか。なんか嫌な思い出でもあるのか?」
ローは口角を上げながら言葉を返した。
「私の名前は”お前”じゃないもの。それにそこまでまだ知らないし、仲良くもないし…」
少し口を尖らせて話すリンの顔は、ローの揶揄心をくすぐった。
(そんな可愛い顔をするな)
「なら、仲良くなればいいんだな?お互いのこと、知ればいいんだろ?」
そう言ってローは、リンの腰に手を回し、グイッと引き寄せた。あと十数センチ近づけば、唇が重なるだろうというくらいの距離だ。
「キャッ!…ち、近い…」
リンは顔と耳を真っ赤にして顔を逸らした。
「ちゃんと見ろ。」
顎をクイッとローの方に向けられる。
見つめられ、なにをされるのかと、ドキドキしていると
「まだ、今は何もしねェよ。」
と慌てて離された。
引き寄せたはいいものの、ローはドキドキしている自分の心音が伝わるのでは、と焦って慌てて離したのだ。
(なんてェ美貌だ……恥じらう姿も可愛い…それに…)
「…んもぅ…ビックリさせないでよ…ん?今はまだ?」
ローは何事もなかったかのように、彼女の質問を無視して必死に服を探し始めた。
「あぁ、あったあった。これならいいだろ…」
とリンにオレンジ色のそれを渡した。
広げたそれは、ベポが着ているオレンジのツナギ。
「…これ?」
「それなら、アイツらも変な気を起こさねェだろう。飯の時間だ。オレは先に行ってる。着替えたら来い。」
とローは部屋を出ていってしまった。
ふぅ…、とリンは赤くなった顔の熱を覚ますため、両手でパタパタと仰いだ。
(あぁ…ビックリした…いきなり引き寄せられるんだもん…)
会った時から思っていたけれど、ここの船長は端正な顔立ちをしている。それで医者で強くて優しくて……
モテるんだろうな。
そんなことを思いながら、リンは、自分のうるさく鳴っている心臓を落ち着かせようと、胸に手を置いて大きく深呼吸をした。