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【黒執事】翡翠の少年【BL】

第3章  翡翠と紺碧


 すると、人垣の向こうに緑のウェストコートの彼が居た。
彼は人垣を避け、俺の方へ来た。助け舟を出してくれるのか……と思いきや、彼は俺の両手を取り、言った。
「素晴らしいプレーだ!」
 真っ直ぐな眼差しが俺を突き刺すように見つめた。温かくて大きな手に更に力がこもり、痛くはないものの、相当な熱意を感じた。
『へ?』だが俺はいきなりの事で間の抜けた声しか出なかった。
「強制はしないがお前ほどの才能を持つ生徒なら是非緑寮へ来ると良い!! いつでも歓迎しよう!!」
『あー、その』
 俺が視線を彼の大きな手に移すと我に返った彼は赤面しながら握った俺の手をパッと離した。
「コホン……ま、まぁ他の寮の見学もすべきだな……とりあえず次は青寮だ、青寮はブルーアーに案内してもらってくれ」
『……は、はぁ』

 *

「ここが「紺碧の梟寮」。僕はロレンス・ブルーアー、ここの監督生だ。だが僕は君に何が出来るかを知らない。」
 眼鏡をかけ常に本を読んでいた青のウェストコートの生徒がふぅっとため息をつき、俺の前に少し分厚い本を置くと、言った。
「とりあえずラテン語から始めよう。」
『……?』
 俺は分厚い本を手に取り、まじまじと見た。書いてある内容は異国の文……多分ラテン語だろう、とは分かるのだが、書いてある内容はさっぱりわからない。
「……そこのラテン語を音読してくれ。」
『?』
「音読だ。お ん ど く。……声に出して読むんだ。」
『オンドク? あ……よ、読むってこと?』
 少し慣れ始めた英語を聞き取り、ラテン語の本に目を移した。悔しい事に英語も分からなければラテン語さえも理解はできない。本に鼻をすりつけるようにして見ても、本を逆さ向きにして見てみても、分からないものは分からないのだ。
「読めないか?」
『……』
「読めないなら仕方がない」
『……』
「君にはもっと性に合う所がある筈だ。次は赤寮に行ってみろ。レドモンドが案内する」
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