第3章 翡翠と紺碧
「クリケットを知っているようだな?」
緑色のウェストコートの男子生徒が俺にクリケットのバットを差し出す。バットの柄は俺の方に向けられ、どうやら俺にクリケットをやって見せろとも言っているようにも聞こえた。
彼の顔をよく見ると、かなり凛々しい顔立ちをしていた。金髪をオールバックにし、意志の強そうな太い眉と緑眼。バットを差し出すその掌は俺よりも少し大きくって、強そうだった。
「見せてみろ」そう言われ、差し出されたバットを受け取った。
彼は少し微笑み、グラウンドに向かって大きな声で言った。
「お前達! 一人交代だ!」
するとグラウンドから一人、駆け足で抜けていった。周りの注目が俺に集まる。彼は俺の背中を押し、グラウンドへ行くように促した。
「異国人だから言葉は伝わらないが、クリケットの心得があるようだ! さぁゲーム再会だ! フェアに行け!」
彼が言った瞬間に、フィールドに居た選手たちが俺に軽く会釈をし、今まで止まっていたゲームが再会される。
*
試合終了の合図が鳴り響き、選手が俺の方に一気に集まった。得点は俺が中心となって獲得。気付けば試合終了になっていた。
「すごいなお前!」
「対戦相手ながら尊敬するぞ!」
「その技術はどこで習ったんだ!?」
『え? えっと?』
「ドイツではクリケットが有名なのか!?」
『あ、あの』
「俺にもこんなプレーは出来ないな!」
全くわからない言葉が周りから俺に飛びかかる。悪くは思われていない事は分かるのだが、何を聞かれているのかが全く理解できない為にただ周りを見回してオドオドしているだけしか出来ないでいた。