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【黒執事】翡翠の少年【BL】

第3章  翡翠と紺碧


 渡り廊下は整備され、緑色の芝生と石畳が味気のあるイメージを放っていた。花壇にも様々な花が植えられ、まるで豪邸のような中庭が、学校としてどれだけの伝統があるのかを感じさせてくれた。
――いつもの俺ならば、この景色をゆったりと眺めたいと思っただろう。だが。
「まずこいつがどんなことが得意なのか」
「そうだ、一回何かやらせてみたらどうかな? 芸術、勉学、運動……勿論、条件次第で赤寮でも君を歓迎しよう」
「決めるのは校長のみだ。例外は認められない」
「もういいよどこでも変わらない」
 個性的な4人に挟まれて訳の解らない言葉が飛び交う。これから俺は何をされるのか、何をすればいいのかが分からない。ああ、せめて! せめてここにドイツ語を少しでも話せる人間が居たらどんなに救われただろう!!
 と、少しばかり懐かしく感じていた音が響いた。バットがボールを打ち、ウィケットにボールが当たりこむ音が聴こえた。
『クリケットだ!』
 思わず俺は歩むのを止めて辺りを見回すと、先に歩いていた4人は振り返った。
「今、クリケットと言わなかったか?」
 緑色のウェストコートを着た金髪のオールバックの男が俺に歩み寄り、聞いた。
『えっと……あの! 何処かでクリケットをやっているんですか!?』
「やはりクリケットと言ったな……おいレドモンド、ブルーアー、バイオレット。少しこいつを借りていくぞ」
「いいよ別に」
「それじゃ、あの場所で待ってるよ」
「変な事を教え込むなよ」
 緑のウェストコートを着た男に「ついて来い」というように腕を引かれ、他の3人とは別の方向へと進む。やがて緑の獅子のエンブレムが記してある建物へと入り、建物の奥……グラウンドへと連れてこられた。
『ふわぁ!』思わず間抜けな声が漏れ出る。
 楕円形のフィールドにガタイの良い俺よりも少し年上の男子生徒たちが夢中になりながらクリケットをしていた。
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