第2章 名門寄宿学校、ウェストン。
「英語か。英語を話せないのか?」
『えっと! そ、そのー、ありがとうございます! えっとそのあの……』
あわあわと伝わる筈の無いドイツ語で、頭がゴチャゴチャになるほどにウェストコートの4人に語りかける。
「ドイツ語か。言っている事は分からないが」
「どうでもいいよ……早く中に入ろう」
「やれやれ、まさか英語が話せないとは……」
「でも良いじゃないか? 一生懸命勉強しようとしてるんだから」
四人がワイワイ話し合っているところを唖然と見ていた俺は、恐れながら話しかけた。
『俺、グリューネと申します。あの、今日からここでお世話になると聞いたのですが』
「何を言ってるかわからないが、とりあえず転校生だからどこに行けばいいのか、か?」
『えっと?』
「うむ、そうだな。まずは寄宿する寮だ」
『あの』
「まぁ芝生の事はまた今度教えるとして」
『うーんっと』
「早く行こう疲れた」
4人は俺の話は全く聞いていないようだった。いや、聞いていなくはなかったようだが、殆ど彼らの言う事が理解できなかった。
とにかく俺はこの先に何があるのかを全く理解せずに、ただ大柄な緑色のウェストコートを着た生徒に荷物を持つのを手伝ってもらいながら、よく分からない所へとただ案内されるしかなかった。