第12章 日常
目覚めたらやけに鼻の奥がツーンとしていた。やけに息苦しい上に血の味がした。そして、
『ふがっ……!』
冷たいと思えば、自分はハーマンの膝の上で顔に冷えたタオルを当てられて居た。
『ハーマ……っ、グリーンヒル?!』
思わず下の名前を言いかけて言い直す。彼は俺の顔を覗き込んで「大丈夫か?」と訊いた。
飛び起きてグリーンヒルの膝元と顔に乗せられてたタオルを交互に見る。俺のシャツや手は真っ赤だし顔は痛いしで大体何があったかは把握出来た。グリーンヒルは気付いたように顔を赤くすると事を説明しだした。
「い、いや、その、お前にボールが直撃してだなッ!ストレート球だったからかなり痛かったと思うが、その、選手もワザとした訳ではなかったんだ!だ、だから許してやってくれ!」
『あ、あの、ボーッとしててすみませんでしたッ!ぼ、ボールも真っ直ぐで取れると思ったんですけど、その、すみません!皆の動きを止めたりとかして!あの本当、すみません!』
お互い顔を真っ赤にして騒ぐ。バラバラの言語が更に心を掻き乱す。当然お互いが何を言ってるかなんて分かりもしない。周りも「おおう……」などと間の抜けた声を出しながらもそんな二人の光景を見ていた。
「お、一昨日ッ?!昨日か!?あ、アレはすまなかった!と、唐突だったし何が何だかで……」
『昨日でしたっけ!?一昨日?!あ、アレもすみませんでした!お、俺なんかがあんな事……』
噛み合わない会話は続く。周りの視線はどんどん集っていく。
「あ、その、グリュ……レーベ!」
『ハーマ……グリーンヒル先輩!』
お互いに顔を見合わせる。同じような言葉を交わそうとした事に気付いてちょっと吹き出た。周りは更に首を傾げた。
と、鼻からまた温かい何かが垂れてくる。
『ぬおお!?は、鼻血ッ?!』
「た、タオル!誰かタオルを持って来い!!」
青空にざわめきが響き渡った。