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【黒執事】翡翠の少年【BL】

第5章  大きな手


グリーンヒルに片言ながらもこの学校のルールや、寮の違い、そしてその寮で最も最上位の――自分を含めるウェストコートの男達、P4の存在。そして校長の絶対的な権威を教わりながら、一つの扉の前にたどり着いた。
『ここ、あなたの、住む、部屋』
「部屋?」
『学校の人、いる、中』
「生徒、いる、ここの?」
『…………たくさん』
 両者ともそれぞれの異国言語の本を睨みつけるようにしながら単語を並べていく。ここは寮。多分この中には俺と同じ生徒がたくさんいるのだろう。

――仲良くしてくれると、いいけどなぁ。

 彼がドアノブに手をかけ、ドアを開くとドアの隙間から鼻を突き刺すような異臭が出てきた。
『ゔッ!?』
 思わず口元を押さえ、臭いを遮断しようとするが花の奥にまで入った異臭は加減を知らない。
「お前達、転入生だ」グリーンヒルも少しだけ眉をひそめてドアの向こうに言った。
 ドアの向こうには脱ぎ捨てられたシミだらけのシャツ。泥だらけの靴下。その他よく分からない物。その他諸々が目に入った。
『え』
「おおおおお! 昼のクリケット少年じゃないか!?」
「感激だ! 我らの寮に所属するとは!」
「さぁお前の分のベットもあるぞ! 遠慮なく使え!」
 身なりが整った紳士達の行動とは到底的外れな部屋。部屋と呼ぶよりかは魔物の住処と言った方が良いだろうか。俺はグリーンヒルの腕を引いて部屋から出た。もちろん異界へのドアは閉めた。
「グリーンヒル! あれ部屋?!」
「あ、あぁ」
 頷く彼を前に泣きたくなった。メイドや執事がいないのは当たり前だけど。ここまで汚れてるなんて考えられるかな!
 もちろん、絢爛豪華な物は最初から期待はしていなかった。けど、これはあまりにも――
「グリーンヒル! 俺! 掃除! する! この部屋!!」
 グリーンヒルの両肩に手を置き、必死に語りかけた。
「そ、掃除?!」
「俺、頑張る!」
 声を裏返す彼に意見を伝えなくては、と必死に語りかけた。
「絶対する! 他の部屋、この部屋、ちゃんと、綺麗、する!」
「今日は……ダメだ」
「お願い!」
 グリーンヒルは溜息を吐くと、床に置いてあった俺の荷物を手に取ってとある場所へと案内した。
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