第6章 予兆
「監督生の部屋だ。……一応掃除はしてある。筈だ」
グリーンヒルが部屋の鍵を開け、開いた。勇ましい獅子のエンブレムと緑色と黒の落ち着いたイメージの空間。ツインベッドよりも大きいキングベッドの存在とサイドテーブルのずっしりとした木の風合いが、まるで何処かの豪邸にいる様にも思わせる……筈だった。
やはり部屋は散乱していた。あの部屋ほどではないが、床には教科書、荷物が散らかり、グリーンヒルはため息を吐きながらそれらを拾い、机の上に置いた。
「流石にあの部屋は見兼ねるな……掃除はやるなら明日にすべきだ。今日は遅い。俺も手伝う。……ちょうど明日は授業もない日だからな」
手伝う、という言葉だけは伝わった。彼がニコリと微笑むと俺も同じように微笑み返した。
「あぁ、疲れているだろう? ロクなもてなしも出来ずにすまない。そこのバスルームを使ってくれ」
彼はバスルームを指差し、タオルを差し出した。俺は頷いて、タオルを受け取ると、バスルームに入っていった。
案の定、バスルームは綺麗ではあったが散らかっていた。
――せめてもっと綺麗に出来ないかな
なんて苦笑するのだった。