第1章 片思い
轟くんと手を繋いで校舎を歩いている。その手はいつも以上に強かった。
「どこまで行くの?」
「…。」
言葉も返さないあたりをみて
どうやら怒っているらしい…何に対してだ。
付いたところはよく2人で過ごしている中庭のベンチにきた。
そこで私を座らせると
轟くんは、私を上から見るような中腰になる。
ドンっという音を立て、ベンチの背もたれのところに腕をついた。…女子がときめく壁ドンのようなシチュエーション。見事に私は轟くんの下敷きになると
「轟くん、どけようか」と訊ねる。
轟くんとの顔の距離が少しだけ近くなったように感じた。
「退かねぇ」と囁くように言った。
轟くんの行動にどきどきと心臓が鳴り響く。
そのせいで余計に轟くんと目が合わなかった。合わせられなかった。
「こっち見ろよ」
「えっと…うん。そう!
いつもみたいに隣に座ろうか…?」
「が俺を男として意識しねぇからいい」
そう言われて、なんて言い返せばいいのか
言葉が見つからない。
それから轟くんと目が合った。が、すぐに逸らした。
それが気に食わなかったらしく、轟くんは軽く舌打ちをする。
「俺は以外、見てぇし…これからも先ずっと、お前が好きだ」
「…、えっと…」
告白されたことに気づいてなんて答えればいいのか分からなかった。
轟くんに対して思う気持ちは好きという気持ちなら分かる。
likeなのか、loveなのか…
分からない感情だった。理由も分からず泣いてしまった。
「悪りぃ…泣かせる気は、なかった」
「ごめんな…っ、泣くつもりは…っ」
轟くんは立ち上がり、私の隣に座った。
そして、申し訳なそうな顔をしながら頭を優しく撫でながら「…」と呼んだ。
本当はその手が好きだと思いながら
「轟くん、今は…なんて言えばいいか分からない…けど
ちゃんと、答えるから…でも、轟くんと一緒にいたい気持ちは変わってないよ」
轟くんをまっすぐ見て今、言える言葉を彼に伝える。
微かに微笑んで
「今はそれでいい」と答えた。