第1章 片思い
「轟くん、暖かいー」
「そりゃあ…が暖めろって言うからな」
轟くんの左手を頬ずりしながら暖まっている。そろそろ夏本番。
体温調節が苦手な私にとって、轟くんは温度調節するため非常に大切である。しかし小学生のときからこんな感じで轟くんに構ってもらえるのでとても嬉しい。
「轟くんとキスしたらどうなるの?」
「は…?」
思ったことを口にしてしまった。言った本人でもとても恥ずかしい。
今、轟くんの顔をみたら気まずい気がして下を向いた。
「俺も分からねぇけど…どういう流れで…?」
「だって、右側が冷たい左側が暖かいんだよ?
キスしたらどうなるのかなーって…熱い?冷たい?」
「…したことねぇからなんとも言えねぇ…」
轟くんは悩みながらそう言った。
「そっかー…。
なら、キスしていい?」
冗談で訊ねると
「いいのか?」
轟くんは驚いた表情をしていた。
(そんな顔もするのか…。初めて見たかも)
私はそう思った。
「キスの日だし…いいよ?」
なんて嘘ですよって言う前に
クラスの人から「「他所でやれ!!」」とツッコミが入った。
…ここ、教室だったことをすっかり忘れていた。
それから轟くんには
「…ごめん。冗談で言っちゃった」と伝えたら
「…そうか…」
残念そうで、ちょっとだけ気があるのかなと自分が良いように解釈しようかなと考えてしまった。