第3章 Doll House‐マリア‐
《マリア》とは国王に献上する為に育てられた領主の血を受け継ぐ者の名
大事に大切に愛され育て上げる特別な存在。
領主こと月影 隼人《ツキカゲハヤト》は疲れ果てていた…
「また《マリア》を失ってしまった。いったい何人もの子供達を捧げれば気がすむのか…もう…本当にあんな姿は見たくない!!だが拒むことは出来ない、村の皆の命がかかっている。なんとしても、次こそ我が子を気に入っていただかなくては…」
― 今度こそ《マリア》を幸せに ―
我が子の無惨な姿を思い出す。
顔や体のあちらこちらに痣や火傷の痕があり、手足を縛られていたであろう縄の痕が痛々しく食い込み紫に変色し痩せ細っていた。
美しく着飾りまるで花嫁の様に送り出した我が子が
見る影もなかったのだ…なんと情けない、なんと痛ましい事かとまた涙を流す。
「あの御方が先代の様であればこのような事など起こりはしないのに…」
―コンコン―
静かにドアをノックする音が聞こえる
「旦那様、起きていらっしゃいますか?朝輝でございます。」
(いけない涙を流すなど、また朝輝に心配をかけてしまう)
隼人は急いで涙を拭い軽く咳払いをすると
「あぁ…起きているよ朝輝入りなさい。」