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【進撃の巨人】月明かりのあなた【リヴァイ落ち】

第13章 焦燥



だが、それは違っていた。彼女は、彼女と行動を共にしていた医師に内緒で、たまに夜から朝方まで移民たちの話を聞いたり、親を亡くした子ども達の様子を見にきたりしていた。

俺は、彼女が眩しくて、俺が医療をする意味と彼女が医療をする意味が全く違っていて、近づくことも、話しかけることも出来なかった。

それでも、毎晩、彼女の元を訪れた。彼女が放つ光が、遠くから見ているだけの俺さえも優しく包んでくれているようで、心地よかった。

そして、あの日は月も星もなく、鬱蒼とした闇が広がっているような真っ暗な夜だった。俺がいつものように柱の影から彼女を見ていると。彼女がある老人に突然、つかみかかられた。

老人「お前のように安全な壁の中にいたやつに、何がわかる??家族も...友人も...全てを失ったんだ!!!俺が死のうがお前には関係ないだろ!!もう...忘れたいんだよ...記憶が辛いんだよ...思い出も全部!!意味がないんだよ!!!」

老人は、リンの両腕を掴んで、ナイフで自分を刺そうとしていた。老人がリンに言い放った言葉は、俺がここ最近ずっと思っていたものと同じだった。

ルーカス(そうだ...。思い出なんて辛いだけ..俺もどうかしててこんな所に来るようになってしまっていたが、本当はここに来たら思い出して辛いんだ...。もう、忘れたいんだ...。)

だが、リンは真っ直ぐ老人を見つめて言った。

「私も...何度も大切な人と別れてきました。私を守ってくれた母親、私を助けようとしてくれた大切な家族、愛をしらない父親、そして、私に自由をくれたあの人...。いっそ、忘れてしまった方が楽になるなんて思うこともあるけれど、やっぱり...苦しくても覚えていたい...!!だって、私が忘れちゃったらその人たちは本当にいなくなってしまうんだもん...。だから、あなたも大切な家族や友人のことを忘れないで...!!生きて、思い出して、辛くても苦しくても、その痛みを感じられるのはあなたが、その人たちを大切に想っているからでしょう...?」

俺の中で何かが弾けた。涙が一気に溢れてきて俺はガキみてえにわんわん泣いた。




白い夜明けが闇を溶かして広がっていった。
リンに心を救われたあの日に似た、この空を眺めていると、遠くにリンの姿が見えた。
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