第12章 遠い記憶
ー遠い記憶ー 番外編③
駐屯兵「その背中に担いでいるのは..伝染病患者だな..?こっちへ渡してもらう!!」
イリス「誰が渡すものか...!!私はこいつと生きるんだ..!!」
だが、数名の駐屯兵に囲まれ、私たちは壁の上まで連れてこられた。
駐屯兵「さぁ、選べ。お前が今ここで、そいつをこの下へ落とすことが出来たら、お前の命は助けてやる。ただでさえ、今回の伝染病で医務官が減ったからな」
イリス「...!?そんなこと...できるわけがないだろう!!そんなことをするくらいなら...死んでやる!!」
背中のアンドリューの手を一層強く握った。
突然、私の手に優しい温かみが伝わった。
アンドリュー「ちゅっ..。 ーーー。」
アンドリューが手の甲にキスをしたのだった。驚いた私が手を離した瞬間、アンドリューは最後の力を振り絞って壁の外へと自ら落ちていった。
イリス「アンドリュー...!!!!」
私は精一杯手をのばしたが、手が届くことはなかった。アンドリューは最後に言葉を残して、私のために落ちていった。
私の世界から色がなくなった。心は死に、髪は真っ白になり、瞳も乾ききってしまった。
あれから数ヶ月が経ち、私はエルヴィン団長と出会った。そして、調査兵団専属の医療部隊を作ろうとしていること、そしてその第1期隊長に私を任命したいと話した。
私はアンドリューが死に際に言った言葉を思い出した。
アンドリュー「ちゅっ..。 生 き ろ。」
私は再び生きて、アンドリューの意思を継ぎ、誰かを救うことを選んだ。だが、この閉ざした心を再び開けるものなどいないと思っていた。だが、
(私はいつもイリス隊長の暖かさに守られてきた気がするんです。)
イリス「アンドリュー...。見ていてくれているかい?また少し、生きる希望が湧いてきたよ」
ー遠い記憶ー 番外編 完