第11章 自由への意思
ミカエルside
「それでは、ハンジさん。次の班へ行きますね」
ハンジ班での仕事が終わり、次の班へと急いだ。
壁外調査前はナーバスになる人が多いからしっかり観察し、ケアをするようにイリス隊長に言われていたため、ミカエルはなにやらいい匂いのする紙袋を抱えて部屋を訪れた。
トントン
「リン・キーンです。」
リヴァイ「入れ。」
「失礼します。昨日退団した医務官の代わりに参りました。」
リヴァイ 「医務官もだいぶ減ったようだな...。俺は別にどこも悪くない。他のやつらを見てやるんだな。」
「いえ、リヴァイ 兵長の班で最後ですし、ペトラさん達は用で夜まで帰ってこないとのことですから。」
リヴァイ 「フンッ、見かけによらず頑固なんだな。」
ふと笑ったリヴァイさんの顔に、隠すと決めた覚悟が揺らぎそうになり顔を晒した。リヴァイさんの近くにいくとそうなってしまうのは分かっていた筈なのに、イリス隊長にリヴァイ班を任せられた時は心のどこかで喜んでいる自分がいた。
リヴァイ「それは なんだ?」
リヴァイさんは私の手元を見て言った。
「ペトラさんに、兵長は紅茶が好きと伺って持ってきました。よろしければ、淹れてみてもいいですか?」
嘘をついた。本当は、地下街に一緒にいた頃から知っていたからであった。リヴァイさんは、地下商人が売る中でも高めのいい茶葉を手に入れた時とても喜んでいた。
リヴァイ 「いいだろう。淹れてみろ。」
私は、リヴァイさんの部屋のポットを使って紅茶を入れた。
「ど、どうぞ。」
リヴァイさんは昔と変わらない手つきで紅茶を口に入れた。
リヴァイ 「悪くない。...昔も今のお前のように紅茶を入れてくれたやつがいた。小さな手で火傷しねえか気が気じゃなかったが、とても美味かった。その紅茶の味に似ているな」
心臓がドクンと動いた。彼は...リヴァイさんは私を忘れないでいてくれている。それなのに、それが自分だと名乗ることができないことをとても苦しく思った。
「......よかったです。兵士の心のケアも医務官の仕事ですから...。」
リヴァイ「なら、またここへ来て紅茶を淹れろ。」
リヴァイさんはそう言って紅茶を全部飲み干した。
感傷的になってはダメだ。彼が兵士をやっているなら今度は私が彼を側で守ろう。
「はい。また来ます。」