第10章 はじめまして
ミカエルside
あれから5年、再び地下街に行ったとき、リヴァイさんの姿はどこにもなかった。
(俺とおまえが出会ったのも運命ってやつだ。お前にとって俺は月明かりなんだろう?なら、どこにいてもまた会える。必ず、俺はまたお前の元に現れる。)
「リヴァイさん...私は医務官になったよ...。」
今夜はやけに綺麗な満月だった。月明かりが宿舎の窓から漏れて、ミカエルは誘われるように外へ出た。
月を眺めながら、宿舎の横の訓練所を歩く。すると、訓練所の真ん中にある大きな木に寄っ掛かって影を見つけた。
??「誰だ。」
声の主は私に気づいて振り返らないまま言った。
「私は...第一期医療部隊のリン・キーンです。」
??「医療部隊...エルヴィンが言っていたやつか...。ここへ来たばかりだろうがここはガキの遊び場じゃねえ。さっさと寝ろ。」
そう言ったその人の声がぶっきら棒なのに暖かくて、誰かを彷彿とさせた。
「あの...失礼ですが..あなたは..?」
ドクン
ドクン
どうしてだろう。心臓が早くなって苦しい..。
月明かりが木を照らして、大きな枝と葉の間から光が漏れ出した。
??「リヴァイだ。」
リ..ヴァイ..?光に照らされた彼の瞳は、あの日私を救ってくれたあの人と同じものだった。リヴァイ さんだ...やっと会えたんだ...。
だが、喜びは一瞬で消えさった。
リヴァイ 「何を驚いた顔をしてやがる..?おい、聞いてやがるのか?」
リヴァイ さんは私をみても驚かなかった。それもそのはずだ。私はあれから短く髪も切ったし、大人になった。父さんが今じゃ憲兵に見つかる心配もないだろうと言っていた程だ。
それに、私が名乗った名前を...リン・キーンをリヴァイさんは知らない。
エルヴィン団長と約束した通り、ミカエルと名乗る訳にはいかない...。
「すみません。月明かりがあんまり綺麗なものだからぼーっとしちゃって。もう行きますね。」
私はぐっと涙を堪えて出来る限りの笑顔で装った。
リヴァイ 「まて、こんなに綺麗な月だ、そんなに見たければ..ここで見ていけばいい...」
変わらないぶっきら棒な優しさに心が痛くなった。
私とリヴァイさんは一言も話さず、ただ月を見た。
隣で月を見上げる彼の顔はとても寂しそうだった。