第5章 地下街の月明かり
ミカエルside
生きていた限りの記憶をたどりながら月を眺めていた。
私は、愛されていた、たくさんの人に。
カメオのブローチと手紙を握りしめる。
「諦めちゃ...だめだ...!!」
天窓を外すと冷たい空気が一気に入って思わず息を飲んだ。
4階の屋根に登り、プレミンジャー邸の門を見る。
見張り役はどうやら酒を飲んで寝ているようだった。
邸の中にはメイドたちが起きてまだ動き回っているだろうから、ここからしか逃げられない。
ミカエルは、カーテンを割いてロープを作った。
そして、パイプにロープを結びつけ壁のわずかなくぼみを探しながら下へと降りていった。
「怖くない。ここにいた方が怖いんだから。」
ミカエルはなんとか地面までたどり着くことができた。
「急がなきゃ...!!」
見張りの男たちがいつ起きるか分からない。
ミカエルは以前使った屋敷の壁の小さな割れ目をくぐって外へ出た。
「地下街の入り口はどこ..?」
ミカエルは以前から脱走するなら地下街と考えていた。
それは、図書館で前にエルヴィンから地下街にいる子どもたちについて聞いていたからだった。
「あそこだったら、なんとか逃げ込めるかもしれない..!それに...」
ミカエルはエルヴィンの言葉を思い出した。
「この前、地下街に立ち寄ったときミカエルと同じまっすぐな瞳をした青年と会ったよ。彼は、どうやら親もいないない中、何人かの子どもたちを守ってやりながら生活をしているらしい。」
その人に会ってみたい。残酷な世界で強く生きているその人に。