第14章 初恋
イリスside
各訓練兵団への説明が終わり、エルヴィン団長への報告も済んだ。
私は、兵舎に帰ってきたときのリンの様子が気になり、リンの部屋へと訪れていた。
イリス「訓練兵団への説明をしくじった、というわけではないのだろう?訳を話してみろ」
「昔一緒に住んでいて、あることをきっかけに離れ離れになってしまっていた家族が、生きていたことが分かったんです。彼らは訓練兵になっていました。けれど...私を12歳まで育ててくれた二人は...巨人によって死んでしまっていた...。私、どうしてもっと早くにウォールマリアのあの場所に会いにいかなかったのかなって...。結局、私は自分のことしか考えていなかったんです...。」
リンはそう言って、悔しそうに両手を握りしめた。
「私、改めて巨人が憎いと思いました...。目の前で兵士が死んでいったときもそうだったけど、巨人は大切な二人の命を奪った...。私に力があれば...巨人を殺してやるのに...」
巨人を殺すのも、人を殺すのも同じだ。
私は、死体処理班にいた頃の殺伐とした日々を思い出した。あの中にリンがいたら...きっと...
私は、リンを抱きしめてこう言った。
イリス「お前は殺す方でなく、救う方が似合っているよ。お前に助けられ、生きているものがどれだけいると思っている?前にも言ったが、私はお前の真っ直ぐ人を見るところが怖かった。隠しておきたい、誰にも見られたくないものまで見られているような気がしてな...だが、今はそれに救われている。何も言わなくても自分を理解してくれる...それは本当に心を救うんだ。お前にいつか、お互いの心を通わせられるような、そんな相手ができたとき、きっと分かるよ」
死んでいったものたちの意思を、そして未来への希望を、私たちは次へと託す義務がある。それこそが、人類が何かに怯えることなく自由に暮らすための一歩なのだから。