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星条旗のショアライン

第7章 スティーブ&ソー(MCU/潜入任務)



ウルがソーに引き寄せられる仕組みをどうか神には見直してもらいたい。こんな事、不道徳だ。俺達は恋人じゃない。ましてや俺はスティーブを愛している。抱き合う事やその先の事はできればスティーブとしたい。叶わぬ恋だけど、それでも夢を持ったところで罰は当たらない筈だ。ソーは面白がっているだけに過ぎないのだろうが、その軽薄さが俺の夢を傷付ける。
「ほんとうに、いやだ、いやっ……――」
「レイン!」
俺の訴えを聞き流すソーの髭が俺の顎を擽った矢先だった。もう唇が吸われそうだといった瞬間に馴染みのある声が俺を呼び、束の間、肩を掴まれ、とてつもない力が身体を外方へ飛ばす。腰が抜けているせいで背中から倒れそうになるけれど、ソーとはまた違った逞しい腕が俺を包み込むように抱き留める。途端に香る大好きな彼の匂いに一気に緊張が緩んだ。
「スティーブ……」
「レイン、大丈夫か。帰りが遅いから心配したんだ」
「だ、大丈夫」
キャプテンは抱き締めていない方の片腕で、さまよう俺の手を掴むと自身の首に導いてくれた。反射的に腕を巻き付けて抱き付くと、グッと近くなった彼の顔もまた安堵の表情で綻ぶ。可愛らしさもあって格好良さもあるその微笑みに釘付けになってしまった俺は、キャプテンを挟んだ向こう側でソーが憮然とした面持ちで睨み付けてきていたことに最後まで気付けなかった。

(5)

場所は変わってアパートの中。ソーが合流して盗聴任務を再開しようといったタイミングになって、ソーとキャプテンが口喧嘩を始めてしまった。小声であることから今は任務中で大声を出したら不味いと分かってはいるのだろう。心配性のキャプテンが『レインに下心を持って触るな』と俺の扱いについて苦言を呈せば、ソーも負けじと『俺達は一種のbunchだから聞けない話だ』と反論する。
そんな口論をヘッドセットを被りながら背中で聞いていると徐々に知能の低い言い合いになっていくから、当事者なのに呆れてしまったりもして。壁の向こうのターゲットはまだ致している様子だし、疲労の蓄積の速度が増していく。
『あっ……あ、まってぇ、ああっ、あ!』
「……」
『そこっ、あっ、だめったらぁ!』
「……?」
『あ、あ、あ、いいっ、いいわっ、ああっ!』
「……これ」
――……音声の違和感に気付くまでは。

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