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星条旗のショアライン

第7章 スティーブ&ソー(MCU/潜入任務)



(4)

キャプテンの言葉に甘えてアパートのエントランスから外に出ると、石柱の門に寄り掛かる男が一人。グレーのパーカーが死ぬほど似合わないが、彼曰く『お気に入り』だそうで愛用している姿をよく目にする。男性にしては艶のある長い髪を無造作に纏めあげた姿は地球で生きる為のちょっとした処世術のつもりであるとは彼が髪を切る時まで知るよしもなかったが、それはまた別の話だ。
「フリーマン」
「ソー」
石柱から肩を浮かせたソーはこちらに向かって来る際、ムジョルニアの角を踏み付けて跳ねあげさせ、一瞥することなく引き掴む。薄く笑みを噛み、太腿を漕いで速度を上げてやってきて…………いや待て速すぎる。それではもはや突進だ。
「ソー、待っ――……」
「逢いたかったぞ、フリーマン!」
「ぐぅっ」
アメリカンフットボールの選手宜しくタックルをかましてきたかと思えば、ソーのふとましい一対の腕は俺が体幹を危ぶむ前に胴体へすかさず巻きついた。なんと熱烈なハグだろう、確実に息が止まった。
俺がムジョルニアを持ったあの日からソーはずっとこの調子だ。『俺から逃れられない』という台詞は嘘ではなく、地球に滞在している間はどういう原理なのか居場所を伝えていないにも関わらず、必ず俺を見付けてスキンシップを図ってくる。今日はあらかじめ任務に合流すると聞いていたからソーに会うことは分かっていたけれど、だからといって抱擁を許容できるかといったら答えはノーだ。
「ソー、離して、くれ」
「何故だ。俺は抱き締めたい」
本当に締めてるんだよ、この馬鹿力! そう吠える事が出来たらどれだけ良いか。俺の抵抗が甘いのは一重に、ウルに働き掛けるマインドコントロールとヴィブラニウムへの通電性による恐怖の為だ。
既に全身が痺れてきてぼうっとするし、一種の骨抜き状態。立っていられなくなって、抱き返したくないのにソーにしがみつかないとそうしていられない。俺達の身長差は俺とスティーブよりも更に開いているから、段々と覆い被さられていく。
「いやだ……はなせ……っ」
「お前から俺を求めているように見えるが」
「もとめて、ないっ」
「可愛い奴だ」

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