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星条旗のショアライン

第7章 スティーブ&ソー(MCU/潜入任務)



「レイン、準備出来たぞ」
「ああ、少し待て」
この集音器は穴を開けずに壁に密着する特殊構造で、裏側に複雑な仕組みを抱えているからとてつもなく重い。キャプテン・アメリカの超人血清はどんなものか分からないけれど、少なくとも俺に打たれていた超人血清は張り裂けそうなくらいの筋肉は与えてくれなかった。この時点でようやく互いが適材適所から外れた仕事を担当していることに気付けたが……もういいか。
「準備完了。同期確認頼む」
「……完了だ」
「よし。集音始めよう」
「了解」

(3)

『あっ……あ、まってぇ、ああっ、あ!』
「……」
「……」
『そこっ、あっ、だめったらぁ!』
「……」
「……」
『あ、あ、あ、いいっ、いいわっ、ああっ!』
「良いのか駄目なのかどっちなんだ」
「思うべき所はそこじゃないだろ」
血の気が引いた思いでヘッドセットを外すと考えていた事が口に出ていたのか、隣で頭を抱えて疲労困憊した様子のキャプテンから冷静に指摘された。
盗聴を開始したものの、一時間程度でターゲットが部屋に女性を連れ込み、致す事を致し始めてしまった。最初こそ潜めた声音で会話を始めたから有益な情報をクライアントと打ち合わせしているのかと思ったが、とんだ間違いだったようだ。
「少し……外の空気を吸ってくる」
「ああ」
任務の放棄はどんな形であれどんな理由であれ許さないキャプテンだけど、俺を哀れんでくれたのか独特の下がり眉で送り出してくれる。こういったことにまるで免疫がない己が不甲斐ないばかりだ。それに比べてキャプテンの落ち着いた態度は見習わないといけない。あの甘いマスクだ、女性が放っておかないだろうから俺の知らないところで経験を積んでいるに違いない。
(……)
こんなにブーツが重いと感じたことは無い。どれだけ土塊をくっ付けても金属を含む俺の方が圧倒的に重力に囚われているからブーツにまとわりつく泥くらいじゃ『重い』だなんて思わない。
(……まったく。自分がいやになる)
――気持ちが落ち込んでいるから足が重いのだろう、そこまで考えが巡って、余計な嫉妬にまみれかけて、暗闇に落ちそうになる思考を無理やり打ち切った。

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