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星条旗のショアライン

第15章 【長編】2019年 Xmas企画②(MCU/鷹and邪)



(ひとつずつ、確実に考えていこう)
スーパーソルジャーの俺に薬品は効かない。即ちこの倦怠感は常識離れした幻術、魔術、魔法の類いとみるのが妥当だろう。厄介だ。少なくとも俺を拐かした犯人はクリントの自室から見知らぬ牢獄へと瞬時に移動するだけの技術を持った相手に他ならない。武力面でも俺より圧倒的に優れている事はチタウリを思い起こさせるような銃火器でお察しだ。多対一で圧倒的に不利な状況下では、きっと無傷で脱出とはいかないだろう。よしんば大立ち回りの大一番になって仲間の姿に擬態などされてみろ――……そこまで考えが行き着いて、俺は目を見開いた。
(……まさか、そんな)
『魔法』に『チタウリ』に『擬態』。悪夢が三つも出揃うなどという事が人生でそう何度も起こってはならない。わざわざ記憶を辿って思い返す必要も無かった。フィルが殺されたあの日を、俺は昨日の事のように覚えている。ニューヨークが戦場と化した悪夢の一日を。
「ようやく私にたどり着いたな。レイン」
「……ロキ」

(5)

「サプラァイズ」
「……」
空間を割いて現れた邪神の名を呼び宣った瞬間、彼は両手を広げて微笑んだ。ヒトを真似てそうしてみましたと言わんばかりに大袈裟で演技掛かっている。目元は相変わらず冷ややかで笑う事を忘れていた。そのせいで極めて胡散臭いというのに、どういうわけだか無垢にも見える。やはり邪なれど神は神なのだな。
溜め息を吐きつつ立ち上がろうとすると、ロキは黙って掌を見せて来た。親指の付け根を突き出す掌打の型は所謂『待て』のポーズだ。座ってろと言う事か。訝しみながらも上げかけた腰を再び沈めてポニーに揺られる選択を取れば、ロキは俺が従って満足したのか笑みを深めて頷いた。その時だった。

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