• テキストサイズ

星条旗のショアライン

第15章 【長編】2019年 Xmas企画②(MCU/鷹and邪)



(そもそもここはなんだ……)
見覚えのない景色だった。一見すると一般的な部屋の作りに見えるが、接し合う二辺の壁は飾り気のない平凡な壁であるのに対し、もう二辺は透明な薄い膜のような壁だ。帳のような柔らかなそれではなく波打つ水面のような映りの悪いテレビ画面のような、そんな壁だ。ぎこぎこと鳴る蹄を止めて緩慢な動作で立ち上がる。そのまま曖昧な境界へ近付いて触れると、瞬く間に紫電が走り抜けて指先を強く弾かれた。
(……)
痺れる腕を見つめながら脱出方法を模索するが、今のところは絶望的に思えた。尤も、外部からの攻撃から対象を守る為の単純な防護壁であれば破壊の余地もあるが、恐らくこれは俺を閉じ込める為に張り巡らせた壁。破壊対策を練った末のものに違いない。
試しに拳を一発叩き付ければ、警報音が鳴り響いて何処からともなく武装した兵士が数名駆け付けてくる。槍や剣といった武器の切先を突き立てながら頻りに「下がれ」と吠える男達を見下ろしながら『やはりそうか』と息を飲んだ。
「悪かった」
「口を開くな、いいから下がれ!」
「……」
両手を顔の高さまで上げて敵意がない事を示しながらゆっくり後退すれば、警戒しながらも持ち場に戻る兵士達。彼らの後方に異様な形の銃を携えている者が散見される。まるでチタウリが扱った光線銃のようだった。あれを撃たれれば俺とて無事ではいられまい。余程の事がない限りは『壁』からの脱出を試みるわけにいかないだろう。
(さて……)
ロッキングチェアの肘掛けを後ろ手に掴み、当たりを付けて一気に座り着く。勢いが増したせいで良く揺れた。ゆりかごに揺られているようで少し気持ちが良い反面、とにかく気怠く、精神的な部分が優れない。何か別の方法で意識を混濁させられているような、そんな具合の悪さが付き纏う。頬杖をついて瞼を閉じて深呼吸をしてみても脳内の霞は晴れないままだ。

/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp