第6章 弱さ *裏
この部屋には居られないこと。
そして、コナンくんの…いや、沖矢さんの住む家にお世話になること。
話さないといけないことはあるけど、どう話そうか迷って。
安「マンションには何をしに行かれたのですか?
…見たところ、荷物を取りに行ったようには見えませんが…」
荷物。
中途半端に詰め込んだそれを思い出して、
そして部屋で浮かんだ疑問も思い出した。
『部屋…』
安室さんに聞いてわかるものなのか、分からないけど。
『部屋に…あの人は、どうやって入ったんでしょうか…?』
何も置かれていないテーブルを見たまま、呟く。
安「…あの男は、貴方の部屋の鍵を所持していました。」
一瞬言うのを躊躇った安室さんが、教えてくれる。
『鍵、を…?』
一体いつから?
安「…だから。そんな状態で、何故今日部屋に行かれたのかを聞いているんです。」
血の気の引いた私の顔を見て、安室さんが少し強めに言った。
心配してくれている。
それが分かって、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
『…ごめんなさい。
どうしたらいいか分からなくて…』
正直なところ。
初めは怖くても、部屋に戻ったら意外と大丈夫なんじゃないかと思っていた自分がいた。
そうすれば、誰にも迷惑をかけずにこれまで通り過ごせるのではないかと。
だけど、そんな自分は甘くて。
私は、弱くて。
それを安室さんに話すと、彼は大きなため息を吐いた。
安「この件について、貴方が強くある必要はない。」
もう泣かない。
そう自分に言い聞かせて、ギリギリのところで涙を堪えていた私の目元に、安室さんの指がそっと触れた。
安「今泣かなくて、いつ泣くんですか?」
安室さんを見ると、痛々しい表情で。
その言葉が引き金だったかのように、私の瞳からぽろぽろと涙が溢れた。
泣いてばかりで嫌になる。
だけどそんな私とは裏腹に、
ほっとした表情になった安室さんは私を優しく抱き締めてくれた。