第1章 日常からの、非日常
「いらっしゃいませ」
『・・・・!!!』
わー!!ほんもの!!!
叫ばなかった私を、誰か褒めてほしい。
そこにはニコニコと爽やかに笑う、安室さんがいた。
「・・?あの?」
『あ、あ。ひとりです。』
「はい。お好きな席にどうぞ。」
顔を見たまま固まった私を見て不思議そうにする彼は、それでもニコニコと笑いかけてくれた。
(ああーこれは人気あるはずだよー
かっこいいもん。)
隅の席に座り、
ニコニコと笑顔を絶やさない彼からメニューを受け取りながら、できるだけ自然に、だけどしっかりと顔をみてこちらも微笑む。
(でも、この人が、、降谷零であり、バーボンなんだよね。)
微笑んだ私を見て安室さんが一瞬目を丸くしたけど、一礼して彼はすぐにカウンターへと戻っていった。
(・・あ、あんまり関わらないようにしよう。)
「・・・・ねぇ、お姉さん、落としたよ?」
これで夢も覚めるだろうし、とメニューを眺めていると、足元から子どもの声がした。
『え、コナンくん!?』
「・・え?」
『っあ、・・・・』
完全に気を抜いていた私。
やばい、と思って口を押えたときにはもちろん遅くて。
私が落としたハンカチを拾い上げたコナンくんと目が合った。
「お姉さん、僕と会ったことある・・・・?」
初対面なのに名前を呼ばれ、
しかも「しまった!!」と言わんばかりの反応をする不審すぎる私を見て、子どもなのに眉間に皺を寄せるコナンくん。
いや、高校生だった。
『あ、・・・・ハンカチ、ありがとう。』
にっこりと笑い、私は今の出来事を無かったことにした。
「お姉さん?」
だけどコナンくんがそれを許すはずもなく。
会ったことあるでしょ!と笑ってみたり、
他の人が呼んでるのを聞いてー・・とか
焦って辻褄の合わない発言を繰り返す私を、コナンくんがニコリと、でも目は笑っていない顔で見つめた。