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【名探偵コナン】 ある意味、それは。現実逃避。

第5章 沖矢さん






二人とも。
本当に優しい。


確認を済ませた沖矢さんが「大丈夫ですよ」と言ってくれるのを聞いて、とりあえず安心した。

ほっとしたのが表情に現れたのか、沖矢さんも笑みを返してくれる。



それから沖矢さんにはソファーで待っていてもらい、
私は最低限必要なものをバッグに詰め込み始めた。


自分の部屋なのに早く出て行きたい衝動に駆られて。
バタバタと部屋を行き来する私に、沖矢さんが「ゆっくりでいいですよ」と声をかけてくれる。


『お待たせしてすみません…っ』

準備の途中で、洗面所から持ってきた化粧品を両手に抱えながら、ソファーに座っている沖矢さんを見る。


沖「女性は大変ですね。」


笑ってそう言う沖矢さんの向こう側で、カーテンが風に揺れた。


『…っもうすぐ、終わりますっ』


カーテンからサッと目を逸らして笑顔で告げると、バッグを置いている寝室に向かう。


(沖矢さんが…窓、開けたのかな…)


確かに空気が篭っていたし。


(あの時…)


化粧品をバッグに詰めていた手が、ふと止まる。


(あの時も、安室さんが…
部屋を確認してくれていたのに…?)


どうして、窓が開いていたのか。

どうやって…部屋に……?


そこまで考えると、「まさかまた来るのでは」という恐怖で私は弾かれたように立ち上がった。

リビングにいる沖矢さんの所へ急ぐ。


もう犯人は捕まっているのに。
私の頭からはそれが抜け落ちていて。


『沖矢さん…っ!!』

沖「咲さん?どうしました?」


〈始末しないとね?〉


あの時の男の言葉が蘇って。
沖矢さんが危ないと思ってしまった。


だけど当然、そこには首を傾げる沖矢さんの姿しかない。


『…っあ、…』


(うわ、何してるんだろ!恥ずかしい!)


少しパニックになっていた自分が恥ずかしくなって、笑って誤魔化すけれど。

沖矢さんを見ると、目に入る奥のカーテン。



『…っ』

(なんなの…!)


青くなる私を見て、沖矢さんが立ち上がる。

そして私の方に心配そうな顔をしながら近付いてきて。



その光景が。


もう、あの時の光景にしか思えなくて。




『…っゃ、やだ、』


沖「咲さん?」



後ずさった私の背中が、部屋の壁にぶつかった。









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