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【名探偵コナン】 ある意味、それは。現実逃避。

第5章 沖矢さん






沖「咲さん、」


『っ、こ、来ないでください。ごめんなさい…っ』


あの時みたいに座り込んでしまった私は、もう沖矢さんを見ることも出来ずに両手で自分を守ろうとする。


相手は沖矢さんだとわかっているのに。


沖「咲さん、大丈夫だから顔を上げて。」


そんなこと言われても、カタカタと震える身体は言うことをきかない。


沖「咲さん。」

『ひ、っ!』


沖矢さんは私の側にくると屈んで、そっと私に触れた。

びくりと跳ねる身体を、自分の腕でぎゅっと抱きしめる。

沖矢さんが小さくため息を吐いたのを感じた。


沖「咲。」

『…っ!』

沖「咲、俺の目を見るんだ。」


雰囲気の変わった沖矢さんに驚いて、ゆっくりと顔を上げる。


沖「…いい子だ。そのまま。」


目が合って。
ただ見つめ合ったまま、ゆっくり息をする。

ほんの少しの時間なのか
長い時間だったのか
そうやって呼吸を整えると、身体の力が抜けた。


沖「…こんな状態で、ひとりで荷物を取りに来るつもりだったのか?」


視線を下げた私に、いつもと違う口調で問いかける沖矢さん。


『こんなだとは…思わなくて…』


弱々しく答えると、「まったく…」と乱暴に頭を撫でられる。


沖「…貴方が今のように怖がるのは、私へのおねだりでしょうか?」


『お、おねだりじゃ、ありません…っ!』


慌てて否定すると、「残念。」と残念じゃなさそうに言われる。


沖「まだ、ここに来るのは早かったようですね。」


また少し時間が経ってから来ましょう、と。
結局私たちはそのまま
中途半端に荷物を詰めたバッグを持って、部屋を後にした。





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