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【名探偵コナン】 ある意味、それは。現実逃避。

第5章 沖矢さん





沖「咲さんのマンションに荷物を取りに行きますか?」

『え、…でも、』


沖矢さんは真っ直ぐにこちらを見ていて。
私はコーヒーカップを持ち上げたまま固まった。


まだここで暮らすことを正式に決めたわけではなくて。

なのに、なんだか珍しい強引さだな、と思った。
…キスはいつも強引だけど。


とはいえ、
安室さんの家で暮らせないとなると、できれば沖矢さんの住むこの家でお世話になりたいのが本音ではある。

この不安定な精神状態でも安心できるし、
それにホテル代も馬鹿にならない。


だけど、安室さんの時と同様に
簡単に決めてしまっていいものか迷ってしまう。


これは逆に安室さんに相談すればいいのかな、なんて可笑しな考えが浮かんで。


『…沖矢さん、』


自分で決めなければ。
ちゃんと、考えなければ。


『何が最善か、わからないんです…。
だから、まず、』


私はゆっくりと姿勢を正し、沖矢さんを見た。


『少しの間、この家に居させてください。』


座ったまま丁寧にお辞儀をする。
沖矢さんがふっと笑ったのが分かった。


沖「私は最初からそのつもりですよ。」


『ありがとうございます…!』


受け入れてくれた沖矢さんを勢いよく見上げ、笑顔になる。


『出来るだけ早く、次の部屋を探します!』


とりあえず、前に進めた気がして。

安心感からかニコニコしだした私に
沖矢さんは「笑顔も可愛らしいですね」と笑ってくれた。














『ありがとうございます。』


沖矢さんの車に乗ってシートベルトをしながらお礼を言う。

必要なものを取りに行きましょう、と車を出してくれた沖矢さんに、最初は断っていたけれど。

私は結局甘えてしまった。


沖「歩きではなかなか無理があるでしょう。」


そう言われて、運転する沖矢さんを見る。

ハンドルを握る手。
安全確認のためにたまに動く目線。


(こうやって見ると……)

『沖矢さん、モテそうですよね。』


つい、思ったことがそのまま口をついて出た。


沖「そんなことありませんよ。」


前をみたまま。
サラッと返してくる言葉は、もはや「はい、モテます。」と言っているようで。


(彼女とか…いないのかな?)


これから一緒の家で暮らすことに、少し申し訳なさを感じた。



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