第4章 ストーカー
(朝だし、大丈夫だよね…)
マンションが近付くにつれ、嫌な汗が出てくる。
歯磨きは会社で使っているものがバッグに入っていたので出来たけど。
シャワーと着替えを済ませたい。
このまま安室さんに会うのはさすがに…
そんなことを考えていると、マンションの下に見慣れた車が停まっているのが見えた。
『安室さん…?』
安「咲さん!やっぱり。
一度戻られるのではないかと思いました。」
恐る恐る近付くと、運転席から安室さんが出てきた。
心配して来てくれたのだと言う。
安「一緒に部屋に行きましょう。
何もない事を確認したら、下の車で待ってます。」
『安室さん…!』
この人は、どうしてこうもパーフェクトなのか。
安室さんは先に部屋に入ってくれて、
確認を済ませると車へと戻っていった。
(急がないと!)
安室さんをあまり待たせられない。
私は着替え用の服を手早く選ぶと、それを持って浴室へ向かう。
急いでシャワーを浴び、髪を乾かしてリビングに戻ると…
『…?』
テーブルに、お水…?
(さっき…あった、っけ…??)
テーブルの上に置かれているペットボトルのミネラルウォーター。
安室さんが持ってきて、忘れていった…?
でも、持っていただろうか…??
ぞくっ、と
身体が震えだす。
(で、んわ…っ)
この部屋に、誰かがいる。
私は震える手で、スマホを操作する。
安《咲さん?》
半コールほどでとられた電話。
『…!!』
安室さん、と呼ぼうとしたけれど。
ヒュッ、と、空気が喉を鳴らしただけで、言葉にならない。
ふと目を向けたベランダ。
そこに、人がいるのが見えたから。
標準的な体型に見えるその影が
カーテンの向こうに立っているのが見える。
あまりの恐怖に
ゴトッ!!と大きな音を立ててスマホを落とした。
逃げなければ。
そう思うのに、震える足を動かすことができない。
——カラカラ…
窓の開く音がやけに響く。
パニックに陥る私の前にゆっくりと姿を現した男は、
何度か見かけたことのある顔だった。