第1章 日常からの、非日常
(助かった・・・・)
陸は私と本当に仲が良いらしく、ほどなくして私の住むマンションへ連れて行ってくれた。
『・・えっと、よかったら・・・・あがっていかない・・?』
恐る恐る尋ねる私を見て、可笑しそうに笑う陸。
「本当に記憶ないんだな。笑」
頭を軽く小突かれる。
「病院いくか?」
部屋の中はいつもと同じ。
持ち物も同じ。
免許証も保険証も同じ・・・だけど、住所だけが違った。
『・・・・い、いい・・』
<米花町>
そう書かれた免許証を眺めながら、私の頭の中には有名なあのアニメのオープニングが流れていた。
(米花町、って…この前テレビでやってた映画で出てきたよね…?)
「・・大丈夫か?」
心配そうに覗き込む陸の手元にある新聞が目に入る。
と、そこには”眠りの小五郎、またもや事件解決!”の文字。
『眠りの小五郎って…』
「ん?ああ、すごいよな!また事件解決したって。」
陸も私の目線を追って新聞を見る。
感心して言うその言葉で、私は確信した。
(夢だ…)
心配そうにする陸に、私は少しほっとしながら笑いかけた。
それからとりあえず情報収集、ということで陸と話し込む。
「今日お前、何かミスしたって言ってヘコんでたんだよな。」
『あー、電話のやつ・・・・』
「え、その記憶はあんの?」
『この場所以外の記憶はあるみたい。』
「場所だけ?・・あ、あと俺の事覚えてないだけ?」
『そ、そうかも・・・・』
「おいっ(笑)」
話してみるとものすごく話しやすい。
さすが仲良いだけある。
すっかり打ち解けたころにはもう夜中で。
陸のマンションも近いらしく、「次はまた飲もうな。何かあったら言えよ。」と言い、帰っていった。
『話した感じ、土地と陸以外は現実と同じね・・』
ふぅ。
と、ため息をひとつ。
(情報収集しといてなんだけど、きっと寝たらもう目が覚めるんだろうな~)
我ながらなかなか面白い夢だった。
そう思いつつ、私はゆっくりと目を閉じた。