第2章 工藤邸へ
それから数日。
私はまた変わらない日常を過ごしていた。
[美味しいポテトサラダを作りました。
飲みにきませんか?]
仕事で疲れてちょっと休憩、と伸びをしたタイミングで着信を告げるスマホ。
開くとそこには沖矢さんからのメッセージがあった。
『暇なのかな(笑)』
沖矢さんはたまに何でもないようなメッセージを送ってくれて、実はちょっと打ち解けつつある。
私の行動を知るため、とも考えられるけど。
それでも彼からのメッセージは私を元気にしてくれた。
[いいですね!伺ってもいいですか?]
返信を打ち、送信する。
あとひと頑張り。
私はまたパソコンに向かった。
『お邪魔します』
沖「どうぞ、こちらへ。」
夜。
思ったより遅くなってしまったけど、私は工藤邸にお邪魔していた。
『わぁ!すごい、おいしそう!』
沖「咲さんはお疲れかと思いましたので、喜んでいただけるようにがんばりました。」
目の前のテーブルには綺麗に盛り付けられた料理が並べられている。
『疲れ、飛びました!』
興奮する私を見て沖矢さんがよかった、と微笑む。
絶対私より料理上手い。
全ての料理の作り方や材料を聞きながら、
だけど覚えることはできないと諦めて、ひたすら食事を楽しんだ。
沖「このくらいで良ければ、いつでもお作りしますよ。」
お酒も進み、若干ふわふわしてきた私に反して素面な沖矢さんが、ワイングラスを傾けながら言う。
『本当ですか?沖矢さん、いつでも結婚できますよね。』
沖「お嫁にもらってくれますか?」
『うわー、養えるかな〜』
やや真剣に悩む私。
クスクス笑っていると、なんとなく疑問が口を突いて出た。
『今日はどうして私を?』
本当になんとなく、聞いてしまった。
私の行動を把握したいのかと思ったけれど、
今日の仕事の話や、テレビの話、料理や、お酒の話など、あまり意味のない話ばかりをしている。
だから、聞きたいことがあるのなら答えようと思ったのだ。
でも私の予想に反して
沖矢さんは不思議そうな顔をした。
沖「咲さんのような可愛らしい方と、楽しいお酒が飲みたかった。という理由ではダメですか?」